オーフェン『原大陸開戦』
- 2011/12/02
- 雑記
- 秋田禎信
オーフェン、ログホラ、ヴェスペリアの新刊ラッシュでうっはうはー!
ジュディス下巻も昨日とりあえず読み終えたので吐き出しにスイッチ切り替えよう。
>オーフェン『原大陸開戦』
密度が濃すぎて怒濤の展開すぎてもうくらくらだわー。
マジで開戦だった、世界の危機やってきた、絶望やってきた。東部篇での砂時計に残された砂粒を数えるような、じりじりするような絶望感と違って、なにこのドカーンと押し寄せてきた絶望感。
あと社会に組み込まれて雁字搦めになって動けなくなってしまった『超人』の無力さが哀しい。どうやったところで勝ちのない戦いでこんな最低最悪の負け方をしてしまったのは、二十年前と違って『はぐれ旅』じゃなくなったからで、しかもこの失敗で弾劾されるために、この絶望的な状況で最強の魔王が最前線を離れなきゃいけないとか。
オーフェンが魔王術の代償で何を喪っているのかわからないことが、あまりに不吉すぎて怖ろしい。代償が目に見えない何かでも、代償がないでも、怖ろしい。
マジクの代償も何だろうなー。大規模に使って、最小限に抑えて、数日は魔術が使用不能というのは何だ。そも使用不能になる状態そのものが代償なのか、それとも何らかの代償の副次効果なのか。ラッツベインが前に見たことある、授業サボって吐いてたってのも気になるしなあ。
しかしマジクはわかりやすく化け物だったな、なんつー戦い方だ、なんかもう別次元の魔術士だな。あの母親から受け継いだ才能を真面目に引き出して使うとこうなっちゃうんだな。これがまったく理解できない大半からすれば畏怖の対象で、半端にわかっちゃう弟子の目には変態的なんだな。
ブラディ・バースの二つ名はあの母親の二つ名以前にえげつない代物だったのね。貴族殺しブラディ・バース・ヴァンパイアって言われちゃうともうケシオン・ヴァンパイアの系譜っぽくてホント血なまぐさいわ。後書きの3YAマジクとか無謀編でラッツベインの語ったイメージとかで第一印象が入ってるから、ホント落差が激しすぎるわ。
マヨールの家族についての述懐が進むにつれ、「人を好きなのって結果が悪くちゃ認めてもらえないの?」というベイジットの台詞が最初の印象よりずっと怖ろしくなってきた。
やらかしたことがろくでもない悪戯でしかなくて、それを好意によるものだと言われても最初はさすがに笑うしかなかったのになあ……
あとベイジット意外に隠れブラコンだったな。賢兄愚妹コンプレックスだけじゃなく兄ちゃん好きだったんだな。マヨールが高くて手が出せなかった古書をプレゼントって、せっせとお金貯めたんだろうってこと以上に、それをマヨールが欲しがっていたことを気づかなきゃできない。ちゃんと喜んでもらえる、認めてもらえる誕生日のお返ししたくて、考えたってことじゃないか。
母親があのティッシで、教師が大人になってさらにこじらせたらしいあのティフィスで、ベイジットは心から認めてもらえたと思えた経験がどれほどあったんだろう。マヨールのことを「なにか諦めるだけで褒めてもらえる」と言ったベイジットは、何を諦めても褒めてもらえない、そもそも褒めてもらうことを諦めなきゃいけなかったんじゃないか。
ティフィス&パット兄妹もそうだけど、二人目だからなのか妹だからなのか女だからなのか、なんだかなあ。フォルテはプレ編とか結構不真面目なところもあったりしたけど、ティッシが強すぎるしなあ。
それにしてもイシリーンが男の前で適度にバカなふりをする賢い女で、伝統の女難もチャラになるくらい良い嫁だった。『約束』ではそのうちエッジとどうにかなっちゃうんじゃとかちらっと思ったけど、そんな気配も吹っ飛ばすくらい良いマヨールの嫁だった。
- 2011/12/02