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AGE小説3巻感想


というわけでAGE3巻。

アセムがとてもノーブルだった。

アスノ家がガチでノーブルだった。

いやフリット篇でもノーブルノーブル言われてたけど、しょせんフリットは孤児の身の上になってしまってるわけで家とは半ば切り離された状態だったわけで、逆にアセムはこれでもかとばかりに家が重たいよ。使用人はわかるよ家政婦さんくらいはいてもおかしくないだろうと思ってたよ、でも家令って単語が出た時点でお手上げです何この貴族。何この上流階級。誕生日パーティも政治。
アニメでも育ちの良いお坊ちゃんだとは思ってたけど、田舎で地味に凄い旧家というか良家というか、それくらいのノリで受け取ってたよ。
あの学校もあのいかにも昭和臭い肉団子とその取り巻きが存在しているだけで、普通に良いとこの私立校ならともかく、超VIPの子女御用達校にはとうてい見えないしさ。
そしてフリットがただでさえ特に小説版はアニメにもまして極まりすぎて面倒くさすぎる親父なのに、母親のエミリーまで技術者として超有名人って何それ目眩がしてきた。アニメでは医療だったのに、何この包囲網。アニメのアセムとはまた違う意味で不憫だ。天才一家すぎて。

しかしXラウンダー適性のくだりがまるっと変わったので試験後の親父の、悪意はなくても遅効性の猛毒になったあの台詞は消えてなくなり、ダブルバレット初陣とミューセルとノートラム戦がくっついてしまったせいで、時間をかけて段階を追ってアセムの精神面をガンガン追い詰めていく展開ではなくなったのはちょっと不憫ではなくなったな。家出からミューセルからウルフの死まで一気に駆け抜けたから、一気にがつんと落とされて一気に復活した。
スタート地点の酷さからしたらトントンなのかな。
でもアセムのドン底がソロンシティのゼハートとの遭遇で八つ当たりになっちゃってるのよな。ミューセルはXラウンダーの件でドン底極まって思い詰めた末に道を踏み外したのとちょっと違ってるんだよな。まあ親父のあの台詞が消えたからな。
学園時代の補完もソロンシティの補完もよかっただけに、その後にノートラムしかないっていう最後の大圧縮は残念だ。アニメでも長いトンネルを抜けて光に飛び出した途端に終わったようなものなのに、輪をかけて圧縮されるなんて。

容姿についてフリット篇でエミリーは良く書かれてもフリットはスルーだったけどアセムは美貌だの何だの書かれるので、いろんな意味で母親似をしみじみ痛感する。
ほら駄目親父も息子との最期の別れになるかもしれない笑顔にエミリーの面影見てるし。
笑い方も腹括ったときの強さも母親似なのね。
アセムの父親殺しは、ウルフも最期ああ言っていたから、あの親父は実は意外と駄目っていうことに気づいてその駄目さを許すことから始まるってことでいいんだろうけど、エミリーも許す愛なんだろうなあ。

それにしても『ひかり』のキャプションでこの親子仲はアセムが悟り開いたらそれなりに改善されそうな気がすると私も言ったけど、こうして公式サイドの媒体でそう言われてしまうと複雑な気分だわ。
フリットには理解できないって言われてしまったようで。


そして世界が見えすぎるせいで自分の世界しか理解できないフリットは初っ端から真っ黒かった。
いや黒いっていうか……怖いな、頭良すぎてまっすぐなまま歪みまくった感じが。理性と信念がコントロールしてる狂気とでもいうか。
家族への愛情もある、あるんだけど愛情表現があさってすぎるし。
そういうのもひっくるめて許してあげられるからエミリーとフリットは結婚したんだなと思うしかない。両親がわかりあってるとアセムが思ってるけど、たぶんエミリーがそういう人だからだと思うの。

二十代の頃はまだここまで絶望してなかったんだろうな。赤ん坊アセムの写真を見せびらかしまくったせいで、ミレースが18歳のアセム見ても面影わかっちゃうとか、どんな親バカっぷり。アセムの知らない見えないところに限って親バカ発揮とかどうしようもない。
しかもあんな土壇場で、アセムがまだ自転車に乗れなかった頃とかがぽろっと出てきたうえに、それが「ついこないだ」っておまえの「ついこないだ」は何年前だそれが18歳の息子に思うことかこの駄目親父が!
ってかこんな親父でも自転車の練習つきあうとかやってた時期もあったってことかなあ……アセムの語った徒競走の想い出が切なすぎて、練習風景は想像したくないけど。


ゼハートには海のシーンでもう「おまえそれは初恋だよ」と言いたくなった。いや友情なんだけどね。太陽だの青い星だのおまえの目にアセムはどれだけ綺麗に映っているのかと! いや真理だよね!
デシルと再会でうんざりしたあと、想いを馳せたりとかも本当に。

アニメでもゼハートの解釈はもういっそ本人も自覚的に好きなんだから友情で恋でゼハアセだよとぶん投げてしまえたら簡単で楽なんじゃないかってくらい面倒くさいけど、そのどうしようもなさもまた一興。
アセムより一歩先にいる、社会に出ている、要職に就いている、大人びた役割を振られてるようでいながら、精神面で大人なキャラってイメージはちっともないのよね。あんまりアセムアセムすぎて。
むしろ人間関係が乏しい環境で育ったが故の、アンバランスな未成熟さ歪さが『初めて』のアセムへの執着として一点集中して表れてるようで、普通の友情っぽいアセム→ゼハートに比べて、ゼハート→アセムの感情がどっか癒着っぽいのは、ゼハート側の自他分離が曖昧で無自覚にアセムを自分の一部化して内包してるんじゃないかとか。特に優しいもの綺麗なものへの憧憬を映す鏡として。
そんなことをぐるぐる考えながら『ほしのゆめ』を書きながらやっぱり煮え切らなくて、むきーっとなったことを思い出したんだぜ。あの話いつかリベンジしたい。

ダウネス脱出するときのアセムの「一抹の寂しさと歓び」の入り混じった笑顔をゼハートが生涯忘れなかったっていうのは良い意味で受け取っていいのよね?
生きて帰れる歓びと、ここを出たらまた敵同士なんだなっていう寂しさは、鏡なんだと思いたいよ。

しかしあのご大層なマスクのまま街をうろつくんじゃない恥ずかしいヤツめ。
アセムと出くわしたのは偶然だったけど、何でアラベルを自ら捜してたんだろう。


ロマリーもガチご令嬢!
でもなかなか有能なAGE2のオペレーターになってた。アニメみたくとりあえずアセムを追い詰める言動を繰り返す舞台装置の一つじゃなくなってた。
このロマリーはさっさと退役してしまうのはもったいないんじゃないかな、終盤、ミレースの叱責できちんと血塗られた道への覚悟を決めてるし。ヒロインが二代続いてAGEシステム担当というならそれはそれでいい気もするし。もう魔女になっちゃえよ。


自分は既に死んだ人間と割り切って汚れ仕事上等だったり、ロマリーをえぐい言葉で叱り飛ばすミレースはおっかなかったけど、根っこがあの荒んだ本音モノローグだと思うとちょっと寂しいね。
あとウルフ戦死したときのあの書き方はやっぱりこの二人つきあってた頃があったんですねと言うしかない。もちろん私もそのつもりで書いてたけどさ!


ウルフの本音に深く突っ込んだ描写はなかったなあ。フリット篇であんな風に掘り下げられていたから、25年経って自分が成人を迎える子供がいてもおかしくない年齢で、今まさに目の前にあの頃は子供だったフリットの息子が大人の入り口に立とうとしていて、そこで改めて親の資格っつうもんを語ってくれることを、とてもとても楽しみにしていたので残念。
他者目線や行動、アセムにかけた最期の言葉で推し量れということかー。

ウルフはフリットが父親としてどう駄目なのかもわかってるし、アセムが父親殺しをしなきゃ先に進めないのもわかってる。なのにアセムが道を踏み外したのがノートラム戦にずれ込んでしまったから、駆け足で一回にまとめなきゃいけないこの苦しさよ。
やっぱりノートラムにソロンシティ後全部を突っ込んだのもったいねえ。

あとマッドーナ工房にアセム引っ張ってってロディと引き合わせることもなかった。
アセムとゼハートとロマリーが補完されてるだけに、削られ組が惜しくて仕方ない。


アリーサ→アセムはありか!
そうか、アリアセ片想いはありか……!

ささやかにツボったトルディア全部がガンダムの基地どこからでも発進! なにそれ青空町か! アニメでアセム篇始まった当初、アセムがAGE1で秘密のヒーローやってロマリーは秘密を共有するヒロインなんですねわかりましたと思ったらそんなことは全然なかったことを思いだした。

ディケが中尉にもちょと驚いた。が、ガンダム開発にも携わる技術士官としてなら、それもそうかと思い直した。そうだただのメカニックじゃないんだ。『ひな鳥』でうっかりオブライトに敬語使わせちゃったぜ(笑)

あれ、第一次ノートラム沖会戦? ってことは第二次があるんだ。


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