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遊矢の現状をちょっと考えてみる。


ARC-V70話ラスト、一見前を向いたようでいながら、夕食も取らず睡眠も取らず一晩暗い部屋で独りぼっちで悩み抜いた末に遊矢が出した結論があの自分の殻に固く閉じこもったような決意、しかもいくら夜明けが眩しくても部屋は暗いまま、これはもう遊矢が精神的に再び叩きのめされる展開を覚悟せざるを得ない。
かつてないほど遊矢の精神が危うく感じたが、どうして危うく思うのかわかってきたかもしれない。

無意識無自覚ではあるが、遊矢の根っこのところでは本当は「遊勝のエンタメデュエルがやりたい/受け継ぎたい」のではなく「遊勝になりたい」のではないか。
遊矢は憧れのヒーローである父親と自分を無意識に同一視することで、父親がいなくなった寂しさや、いじめられる辛さや、いろんな不安のストレスをぎりぎり誤魔化してきていたのではないか。
自分より優れた存在や憧れの存在、ヒーローやアイドルと自分を同一視して、その考え方や言動を真似たりして、自分の一部にしてしまうことで強いストレスやコンプレックスから自分の心を守る同一化や取り入れといった防衛機制が、遊矢の行きすぎた遊勝への固執の正体なのかもしれない。

舞網チャンピオンシップの宣誓によれば、遊矢はもともとデュエルが心底好きだったというわけでもない。デュエルをやっていたのはエンタメデュエルありきだったわけだ。遊矢にとってエンタメデュエリストになることは父親になることとと同じで、遊勝のやっていたことなら実はエンタメデュエルである必要はなかったのかもしれない。
すべては遊矢にとって無意識で無自覚のことではあるけれど。

それでも最初はすぐ涙が浮かぶくらい打たれ弱かった遊矢も、ペンデュラム召喚を手に入れて周りが一変して、トラブルもあったけど楽しいことも嬉しいこともあって、今までの狭い身内以外にも関わり合う人が増えて、少し心も強くなった。それにデュエルが好きになったということは、遊矢が父親の模倣のためだけじゃなく本心でデュエルを楽しめるようになってきたということだったのかもしれない。
MCSでの遊矢と沢渡のエンタメデュエル大成功が、たぶんこれまでの話で遊矢が一番満たされた瞬間だった。自信もついてきた。このままいけば、遊矢は少しずつ自分の作った遊勝の影から抜け出して、自分の足で立って、自分なりの道を模索し始められたかもしれない。

でもその後は、友達だった素良が遊矢の知らない冷酷な顔を露わにし、ろくに話も出来ないまま別れ、話が出来たユートはダベリオンを残して消えてしまって、勝鬨戦では逆鱗暴走。わからないことだらけ上手く行かないことだらけでまた遊矢にどんどんストレスが積み重なっていき、バトルロイヤルではオベフォの犠牲者が出るわ素良とは決裂するわ柚子は行方不明になるわ、挙げ句の果てに零児の挑発(とは気づいてないけど)に乗ってデュエルするもこっぴどく敗北。
積もったストレスが攻撃性にいってしまったのは、誰かを傷つけて取り返しのつかないことになる前に洋子さんが宥めたけど、ここで遊矢はエンタメデュエルの道に戻ったようで、実はもっと前に戻ってしまったのかもしれない。
父親のようにやれば大丈夫、父親になれば大丈夫、という間違った信念に歪んでしまったかもしれない。
遊勝を越えろという言葉は、たぶん遊矢は本当の意味では正しく受け止められていない。

その後シンクロ次元でも結局ストレスは大小どんどん積み重なるばかり。長次郎さんとの和解で少し浮上したけど、それ以上にストレスがやってくる。モニタ越しに見ることは出来たけど柚子にも会えないままだし、権ちゃんとも離ればなれになってしまった。

たぶん今の遊矢は自分で思っている以上に精神的に追い詰められているのだろう。
ジャックとのデュエルの際に、遊矢への否定がなぜか遊矢の中では遊勝の否定に直結してしまっていたが、これは遊矢の中で自分と遊勝の区別がつけられなくなってきているのではないか。
それくらい遊勝の影に依存しないと、もう立っていられないところまで来ているのではないか。

……つまりかなりヤバいのではないだろうか、と思った。

だから遊矢は別に成長してないわけじゃないんだよ、沢渡戦まではスタートがマイナスだったから歩みは遅かったかもしれないけど着実に進んでたんだよ、次元戦争に本格的に関わってからは、また遊勝の影という自分の殻に閉じこもりつつあるだけで!


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