「降り出した…」
ふと何気なく見やった窓の外に、白い影が横切ったから。
「何がさ」
「雪が」
もともと今日の空は雨もよいといった感じだったけれど。
「…そう」
「ここじゃあさすがに積もらないよね」
窓を開けて確かめてみた雪は、やはりみぞれで。
「さっさと閉めなよ、寒いんだから」
すかさず飛んできた文句に苦笑したとか。
「つまらないなぁ」
「積もってほしいなんて言うつもり?」
「言うつもり」
即答すると、苦々しく呆れた半眼を向けられたことだとか。
「思い出すなぁ、大雪のときのこと」
窓の外に目を向けたまま。
「例えば?」
開いたページに目を落としたまま。
「雪合戦とか、雪だるまつくったりとか」
「……」
反応が薄くて、つまらないと思ったこととか。
「二階から飛び降りたりとか」
さらりと続けたこれには、さすがに驚いてくれたらしかったこととか。
「……莫迦じゃないの?」
「うん、僕もテッドが飛び降りてきたときにはそう思った」
「で、君もやったと?」
げんなりとしているように見えるのは気のせいか。
「ちゃんと受け身取れば、新雪だし怪我なんてしないよ」
気のせいじゃないだろうなぁと思いつつ、あっけらかんと言い放った。
「……莫迦じゃないの?」
繰り返し、そう言われて。
「結構いい気分だけど」
「莫迦だね」
こんな。
「もし大雪の降るところで再会したら、雪の日に突き落としてやる」
ありもしない、けれど、あるかもしれない。
「もしそんなところで再会したら、雪の日は背後によく気をつけておくことにするよ」
約束にも満たない、ただの言い合い、とか。
「いつになるかは知らないけどね」
「まったくだね」
きっとこれからも、いくつもいくつも、あるんだろう。
何処かでいつか出会う、そんな時に。
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