その瞬間、冷たい風が吹きつけた。
強く、ひどく強く、最後の風が。
風道
ひらひらと風に散らされた長い髪を手で押さえつけて、ナナはひび割れた夜空を仰いだ。
この空が不意にさざめいて、危うげに世界が揺らぎ始めたのは、ほんの少し前。
けれど今、ふっつりと何もかも静まった。
「何よ、これ」
そう呟いた声をさらう風も、消えてしまった。
「何なのよ、これはっ」
思わず両手を握りしめて、掠れた声で吐き捨てるように叫んでも、もう届かない。
風が今、跡絶えてしまったから。
「何してるのよ……あいつは」
それでも、絶対に泣いたりはしないけれど。
悲しまねばならないことなど、何もないから。
帰ってくることくらいは、いつでも信じているから。
だから、これは呆れ果てているだけなのだ。
だって彼も、彼の傍にいるあの子たちも。
きっと。絶対に。間違いなく。
何を迷うこともなく、何ら躊躇うこともなく、ひどく当たり前に、こうすることを選んだのだから。
こうしない道など、彼には存在しないのだから。
道は繋がって、捨てない限り、目を背けない限り、続いてゆくのだから。
彼は、そういう人だから。
そういう人だと、わかっているから。
だから、こんなことに悲しむ心も流す涙も必要ないのだ。
一かけらも、一しずくも、必要ないのだ。
この道は、もうずっとずっと前から選んでいることなのだから。
裏切りようのない、絶対の答えなのだから。
だから。
強張った指をゆっくり開いて、もう一度、そっと握りしめる。
そんなものは、いらない。
きっと彼は、彼らは、何食わぬ顔で帰ってくるに決まっているのだから。
いつものように。
だから。
そう、だから、こんな。
風が止んだ、静かすぎる空の下で。
彼らがふらりと帰ってくるまで。
こうして待って、いても。
どうしようもなく。
こうして信じて、いても。
こんな、憤りにも似た何かだけは、どうしようもなく。
「――莫迦ヤクモ」
だって、十八歳になった彼に、まだ会えていない。
私が知らない時間の、あなた。あなたが知らない時間の、私。
「さらば」見た時点でED後に何かやらかしちゃろうと思ってました。そんで、このネタはタイトル前に使おうと考えてました。ので、元は十数行でした。そしたら一週間後、ヤクモさんと五行戦隊が丸見え。もう長野(疑惑)からも関東からも丸見え。じゃあこの部分だけ単独にしてでも今書くしかないじゃないか!と、変な衝動というか発作に襲われましたヤクナナ。
[SUPER]後記の「二人の関係は、別に恋愛じゃないけど、いろいろ特別な記憶を共有する特別な相手という感じで」とか何処吹く風の勢いで突っ走ってみたいヤクナナ。でも基本はそこです。時間の共有が先にあって、恋愛は後からついてきたでいいヤクナナ。
リクの参観日が10月1日だったから、今は初雪も降った11月後半〜12月? 冬本番という感じはしないので。ヤクモさんは零神操機開封前の一回以外、果たして家に帰ってるのかすら不明ですが、やはり月一くらいは帰っとれ。そんで、秋分が過ぎた後にいったん帰ってきた時には(前触れなく帰るから)たまたま用事で会えず終いで、「次は覚えてなさいよ」って感じな時に五行柱とか。
走る走る夢が走る妄想が走る。ED後はED後で、また。