姉のマリが式神のネネを喪ってしまったのも、結局のところ妖怪退治を生業とするには至らなかったという、それだけのことだ。
 式神を喪うだけでなく自身も大怪我を負って入院した姉の姿に動揺し、翌日の祓えで式神のルリを喪ってしまったナナもそれは同じで、ずっとわかっていたことだった。
 姉と違ってナナが無傷で帰還できたのは、ヤクモが一緒だったという違いでしかない。
「ごめんね、ナナ。私のせいでネネがいなくなってしまった」
「私こそごめん。ルリを連れて帰れなくて」
 意識が戻ったばかりの姉は幽霊みたいに青白くて、なのに泣き腫らした目もとだけが赤くて、ナナはそれ以上、上手く言えなかった。
 ずっとわかっていたことだった。
 父親譲りの才能はそこそこあっても、ずっと筋違いの復讐に踊らされて利用されていた二人は、闘神士本来の使命に生きるには足りなかったのだ。
 それでも闘神士を続けていたかった姉妹のわがままをずっと許してくれていた、今の後見人であるモンジュにはとても感謝している。
 父がいた世界から離れたくないと再び泣き崩れた包帯まみれの姉に、闘神士だけがこの世界ではないと気づかせてくれたことも。
「闘神士の補佐を務める巫女や、符や神具を作成する職人、各地の太白神社の事務方として生きる道もある。君の意思を無視して追い出したりは絶対にないから、今は治療に専念しなさい」
 そう諭された姉は、小さな子どものように号泣していた。
 まだ中学生のナナと違って、学生時代を終えた姉は闘神士として働く機会も多かった。本当はとっくに限界を感じて焦っていたのだろう。
 ヤクモの側にいたナナが、自分の無力を痛感している以上に。
 けれど。
「ナナくん、君も好きにしてくれていい。もちろんすぐに決められることではないだろうが、後見人として援助は惜しまない」
 少し困ったように微笑むモンジュにそう言われて、ナナは目線だけで隣を一瞥した。
 ナナの隣で、式神を喪ったナナ本人よりも酷い顔をしているヤクモの方が、もしかしたら泣き出しそうだと思った。
 まだ中学生で既に当代最強と謳われるほどの実力なのに、ルリを喪った責任は戦場で集中できなかったナナにあるのに、ナナはルリの命と引き替えに守られたのに、この人は平静でなかったナナを引き留められなかったこと、助けが間に合わなかったことを悔やんで、きっとルリの最期さえ、勝手に背負い込んでしまうのだ。
 だったら。
「はい。考えてみます」
 前向きに検討する旨を答えてナナは、モンジュにぺこりと一礼する。
「じゃあお姉ちゃん、またね。ゆっくり休んでね」
 そうして変な顔で押し黙ったままのヤクモの手を引いて、ナナは姉の病室を出た。
 ――この人を守るには、どうしたらいいだろう。
 そんなことを本気で考えたのはたぶん、この時が初めてだった。





彼女の理由。



 何を思ったところで、この手は無力でしかないのだけれど。
 ナナが転がり込んだのはこの太白神社本殿最奥にある神殿であり、唯一の出入り口を塞ぐのは倒壊した社殿の柱や天井だった。
 太白神社の本殿が崩壊した。
 境内に突如出現した竜巻はナナのいた本殿にまっすぐ向かってきて、木造建築のひしゃげる音に危機感を覚えて咄嗟に奥の神殿に逃げ込んだはいいが、そのまま身動きできなくなってしまった。
 倒壊の規模は、神殿の中からではわからない。この本殿の一部だけが崩れたのか、それとも神社全体が根こそぎ破壊されたのか。この神殿自体は本殿の背後にある岩山の洞窟内に建っているというから、さらなる倒壊に巻き込まれて、潰されてしまうことはなさそうだけど。
「あ、血だ」
 床に身体を預けたまま額のぬるりとした感触を拭うと、それは冷や汗ではなく血だった。飛んできた破片で切ったのか。鏡はあいにく社務所に置いてきた鞄の中だが、だらだら垂れているようではないから傷は浅いはずだ。それよりも。
「このままじゃ、マズいかな……」
 最大の問題は、腰から下を倒れた柱に挟まれてしまっていることだった。
 不幸中の幸いか、痛みや圧迫は感じない。血の臭いも寒気も。完全に埋まったのではなく上手く隙間に入り込んだが、足が引っかかって動けないようだった。とりあえず制服から練習着に着替えていてよかった。制服のスカートのままだったら、剥き出しの足が傷だらけになっていただろう。
 痛みすら麻痺するほどの重傷である可能性は、考えたくなかった。
 ひとりぼっちで救助を待つ身なれば。
「どうしよっか」
 腰から転げ落ちていた闘神機を引き寄せて、ナナは薄ら笑う。
 空っぽの闘神機。
 彼女たちの形見代わりにお守り代わりに、いつも持ち続けていたものだ。
 ナナが闘神士であることをやめたのは、闘神士であったことを捨てたかったからではない。
 ただ、ネネでもルリでもない、新しい次のことを、その式神とともに闘神士として戦い続ける自分を、どうしても考えられなかった。
 今これを使って新たな契約を結べば、その式神はきっとナナに寄り添ってくれるだろう。式神にも得意不得意はあるが、すぐに外に出られなくても、ナナをこの瓦礫の山から引っ張り出すことくらいは簡単かもしれない。
 それが正しいとわかっていても、闘神機を握りしめたまま、契約の印を切ることが出来ない。
 まっすぐに前だけを見つめて進み続ける、ヤクモのようにはなれない。
 ナナは弱いから。
「ネネ。ルリ」
 姉を守りきれなかったネネは、消える間際まで泣きながら謝っていたという。
 命と引き替えにナナを守り抜いたルリも、最期まで謝っていた。
 今でも覚えている。
 艶やかなドレスは裂け、整えられた爪は割れ、泥で美しい髪も顔も汚れてしまっていても、ルリは最期まで綺麗に微笑んでいた。


 薄暗い夕暮れだった。
「ごめんなさいね、ナナ」
 その瞬間、力が根こそぎ抜け落ちるような虚脱感にくずおれたナナを、満身創痍のルリが庇うように優しく抱きしめる。
 二人の周囲にピンと張り巡らされた鎖に囲まれた領域は、妖の群れを寄せ付けない結界だった。ネネの使う技にも似ている。だが先ほど結界設置のためルリに言われるまま切った未知の印は、その瞬間、ナナの内側からごっそりと何かを持っていった。
 立っていられなくなるほどの力と、きっともっと大切な何かを。
「ルリ、何言って……」
「こんな時に言うのはズルいとわかってるけど、今までずっと言い出せなくて。でももう、次はないと思うから。――ごめんなさいね、マリが復讐のためにあなたまで犠牲にしようとしたとき、あなたを見捨ててしまって」
「そんな昔のこと、気にしてないよ。だって仕方なかったじゃん、お姉ちゃん猪だし、式神は契約者が絶対でしょ」
 それに姉からは土下座する勢いで謝られて、とっくに終わったことなのだ。
 ナナは笑い飛ばそうとして、引きつって、重たい腕で縋りつくようにルリを抱きしめ返す。
 ごっそりと何かが抜け落ちた感覚が、おそろしく寒々しかった。なのに。
「それでも、いいえ、だからこそなのよ。マリのためにも、私はマリを引き止めなければいけなかった。たったひとりの妹を死なせていいはずがなかった。ひとりぼっちにしていいはずがなかった」
 なのにルリは、とても穏やかに微笑んでいた。
「今度こそ守るわ」
 彼女は静かに綺麗に微笑みながら。
「あなたにもらったこの命に懸けて」
 これでお別れだと言ったのだ。


「――ナナっ!!」
 悲鳴のような呼び声に、はっと目が覚める。
「え?」
 ナナは思わず目を瞬いた。
 夢を見ていた。ルリと最期のお別れをした夕暮れの森の。
 いつの間にか眠っていたのだ。
 そしていつの間にか、そこに彼がいた。
「ヤクモ?」
 ナナの目の前で、唐突な災難に見舞われたナナ本人よりも酷い顔をしているヤクモの方が、もしかしたら泣き出しそうだと思った。
 そろそろと伸ばしたナナの手を、まるで壊れ物のようにヤクモの手がそっとすくい取った。
「よかった……」
 あたたかかった。
「私、助かった?」
「すぐに助ける」
 見上げれば、出入り口を埋めていた瓦礫に人一人がくぐれるくらいの穴が開いていた。
 その向こう側から途切れ途切れに聞こえてくる声から察するに、どうやらヤクモの式神たちが瓦礫の撤去を進めているらしい。ナナが巻き込まれているので式神たちも力任せに吹き飛ばしたりは出来ず、繊細な作業になっているようだ。
 と、瓦礫を乗り越えてやってきたモンジュが、そうじゃないだろうと息子の後ろ頭を呆れた顔で小突く。そうしてナナには落ち着いた声を掛けてくれた。
「遅くなってすまない、ナナくん。今この瓦礫をどけているから、安全に抜け出せるようになるまでもう少し辛抱してくれ。君には強力な加護があるから大丈夫だと思うが、どこか痛いところや苦しいところはあるかい?」
「ない、と思います」
 強力な加護。何のことだろう。
 とりあえず答えながら、ナナは怪訝に目を瞬く。
 そうしている間にも瓦礫はみるみる消えていった。もともと圧迫感はなかったが、自分の身体の上に積み上がっていた瓦礫がなくなっていくのを目の当たりにすると、気持ちが軽くなっていく。
 腰を押さえていた壁板が軽々としかし慎重に持ち上げられて、数時間ぶりに見えた自分の足に、ナナは息を呑んだ。
「どうして……」
 今まで瓦礫に埋もれていた下肢を、おぼろげな鎖が取り巻いていた。
 その鎖をとてもよく知っていた。
 見間違えるはずがなかった。
 ここにあるはずのない、ルリの鎖だ。
「ルリが最期に遺していった加護だ」
 鎖の形をした光は、ヤクモの手が触れると無数の粒になって、きらきら散って消えた。
 せーの。タンカムイの掛け声に合わせて最後の邪魔な柱が持ち上げられて、同時にヤクモが抱き上げたナナの足を瓦礫から引き抜く。
 その首を捕まえて、ナナはヤクモに詰め寄った。
「私だけ、知らなかったの」
 ルリが遺した加護。
「ちょっ、と待て!?」
 間近に迫ったヤクモの顔が、露骨に慌てて後ろに逃げる。と。
「二人とも後にしなさい。とにかく外に出よう。マリくんもイヅナも待っているからね」
 なだめるようにナナの肩を押しとどめたモンジュは、やれやれと苦笑まじりのため息を残して、一足先に外へ出て行く。
 釈然としないがモンジュの言うことももっともだ。ナナは追求を棚上げする代わりにヤクモを突き放すように立ち上がろうとして。
 力を込めたはずの足が思い通りに動かなくて、もつれて、失敗した。
「何やってんだ」
「うう……足がかたまってたのっ」
 ナナが完全にバランスを崩すより早く、とっさに伸ばされたヤクモの腕に支えられたおかげで怪我を増やすようなことにはならなかったが、情けないことには変わりない。
「閉じ込められてしばらく足を動かせなかったからだろうな」
 ほら。ナナに背を向ける格好でヤクモが地面に膝を落とす。
 スカートじゃなくて練習着でよかった。それ以外は考えないようにしてナナが素直に負ぶさると、軽々と立ち上がられた。
「……重くない?」
「はいはい軽いです。――って、首! 締まる!」
 その悲鳴に、ナナは一瞬だけ腕に込めた力を、元通りに緩めた。
 しかし人一人を背負って長々とは歩けないはずだ。迎えが来ているとすれば。
「お姉ちゃん車?」
「今日はそっち泊まれよ」
「私の鞄ー」
「後でな」
 ふと。ヤクモがほんの少し身じろいだ。
「ルリの加護、のことだけど」
「うん」
「あの時の結界は今も生きている。契約が切れた後も、術に込められた命の力を全部使い切るまで、君を護り続ける。そういう呪いだとルリは言っていた」
 ささやくように細い声を聞きながら、ナナはヤクモの首筋に顔を埋めるように隠した。
 姉の前でなくてよかった。
「そっか」
 ナナはルリが消える瞬間を知らない。術を使った反動が強くて、ヤクモが駆けつけたのと同時に疲労で意識を失ってしまったので。
 だから今まで知らなかった。
 あの日からずっとルリに護られていたことも。
 ルリの最期を、ヤクモがこんな顔で話すことも。
「ごめんね」
「なんで謝るんだよ」
 泣き出しそうだと思った。
 でも、いっそ泣ければよかったのかもしれない。
「俺のせいなのに」
「ヤクモのせいでもないでしょ」
 今さら傷がじくじくと痛み出して、ナナはひっそりと唇を噛む。
 ――ああ、この人に背負われたくなかった。
 そんなことにも、今さら、気づいてしまった。


 だからそう、今さら、ナナは引き下がるわけにはいかないのだ。
 翌日、昼前に姉の家から太白神社に帰ると、珍しく人けのある社務所から離れるように、半壊した本殿に背を向けるように、ヤクモが背中を丸めてぽつんと石段に座り込んでいた。
「おはよ」
「はよ。……怪我、大丈夫だったか?」
 前髪で隠しておいたのに、顔を上げるなりナナの額に貼り付いた絆創膏を見つけたらしい。見上げられる角度になっていたのも分が悪かった。
「額の傷は大したことないのに出血が派手って、ヤクモがいつも言ってることでしょ」
 眉根を寄せたヤクモが黙り込む。
 昨日の今日とはいえ、ずいぶんと消沈して――いや、何かを思い詰めているようだった。
 ナナは彼の隣に腰を下ろして、その顔を覗き込む。
「怒られた?」
 他の大人たちに。
  千年以上前に組織の中枢が一度壊滅した天流は、生き残った分家筋が散り散りになって闘神士の血統と技術を伝承するようになって久しい。そうした中で太白神社を軸とする一門は、闘神士の互助会のような形で辛うじて組織らしき体を残している。昨日の襲撃事件を受けて、早朝から会議で人が集まっているのもそのせいだ。近畿各地のナンバープレートを付けた車が駐車場に並んでいたのを、ナナも見ている。
「……嫌みくらいは」
「私たちが伏魔殿に入り込んだから?」
「その前に、封じるべき鬼門をこじ開けてると思われてるからな。それでヘマして妖怪を漏らしたと疑われても仕方ない」
「ちょっと。最初の一回はただの事故だったけど、あの石をコントロールして安全に鬼門を開く儀式を組んだのは私でしょうが。妖怪を外に出すようなミスした覚えはないけど、どうしてヤクモだけが怒られるのよ」
 ナナが半眼で詰め寄ると、ヤクモがぷいと子供のように顔を背けた。
「……俺が主犯だからです」
「何それ」
「他に何があるんだよ」
「どうかしら。それにあの竜巻は妖怪なんかじゃない」
 あれは意図を持っていた。
 明確な敵意は、妖怪の悪意とは違う。
「ああ。ご丁寧にうちの結界も灼き切られていた」
 言ってヤクモは、黒く焼け焦げた符を指先でひらひらと振ってみせた。妖怪の為せることではない。闘神士が関わっている何よりの証拠だ。
「今回の襲撃はたぶん、俺への警告だ」
「これ以上伏魔殿に近づくなって? でも地流じゃなさそうよ。昨日病院寄ったら地流の先生も血相変えてた、いったい何があったって」
 そこは院長が代々天流と繋がりがあり、普通でない負傷も少なくない闘神士の特殊事情を汲んでくれる病院なのだが、その利便性から地流の近畿支部からも医師が入り込んで、多少の揉め事を経た今では事実上の非戦地帯になっていた。
「だろうな。あの人たちが俺たち相手に、今さら町中であんな派手な騒ぎを起こすとは思えない」
 太白神社の地盤を奪いたいならば、天流地流の確執を持ち出して無用の諍いにかかずらうより、より多く地元に貢献すればいい話だ。
 なにより都市部に出現する妖怪とは、鬼門から漏れ出るだけでなく、人間社会の澱みや歪みから生じるものでもある。
「じゃあ何者?」
 つとヤクモが立ち上がる。
「わからない。伏魔殿には未知の敵がいるってのが俺と父さんの結論」
 ナナは手をきつく握りしめる。
 正体はわからなくとも、敵は闘神士、人間だ。
 ――また人間と戦うことになる。
「襲われたうちの神社はケリがつくまで封鎖される。代わりに宗家跡地の社を整備して、太白神社として開放することになった。いくら何でも京都の中心部から分社がなくなるのはマズいってことで」
「それはそうよね」
 知る人ぞ知る、妖怪退治の依頼を受ける窓口でもある。それが古くからこの京都の地に根付いている太白神社の本業だ。
「父さんは総本社預かり。イヅナさんも戻る。だから君も」
「えー。山の中やだ」
「そこまで酷くないだろ」
「山は山でしょ。ヤクモは?」
 ナナが問い返すと、ヤクモはわずかに視線をさまよわせた。
「俺も、総本社に籍を置く」
「とか言って籍を置くだけで、当の本人は新しい分社の鬼門から伏魔殿に潜る?」
「……ナナ」
「私も新しい分社がいいなー。あそこなら学校も近いし」
「新しい分社には、闘神士を兼任する巫女が総本社から派遣されることになるらしいぞ。――ナナはもう、闘神士じゃないだろ」
「だから何よ」
「昨日だってルリの加籠がなかったらどうなっていたかわからないんだ。俺のせいで、これ以上」
「へえ? 最初に伏魔殿に落っこちたときの空間解析も、鬼門を安全に開くのも封じるのも、総本社の書庫で埃臭い文献を調べあげるのも、それに今使ってるマーキングだってマッピングだって、ヤクモ一人で出来たこと、ありました?」
 この人はつくづく、一人で戦おうとしてばかりだ。今でも。
 勢い込んで立ち上がったナナが詰め寄ると、今度はヤクモも負けじと向こうを張ってきた。
「それはめちゃくちゃ助かってる! でも伏魔殿にはもう連れて行けない。これ以上、君を危険に巻き込みたくない」
 その懇願じみた必死さに、ナナは苦笑まじりに小さく息をついた。
 そうだ。そうだった。
「ヤクモが私のこと背負い込む必要なんてないのに」
「それでもナナは……俺の巫女じゃないか」
「うん」
 この人はつくづく、一人で戦おうとしてばかりなのだ。今になっても。
 自分でも忘れるところだったけれど。
「わかってる。伏魔殿についていくのはやめる。術の改良に必要なデータはだいたい揃ったし。もし闘神士どうしの戦いになって、ヤクモたちの足手まといになったら最悪だし。けど、それはそれなの」
 ぴっと立てたナナの人差し指を目の前に突きつけられて、毒気を抜かれたような顔でヤクモがきょとんと目を瞬く。
「ナナ?」
「今の私は闘神巫女で、ヤクモ、あなたの巫女なの。巻き込むとか莫迦なこと言わないで」
 巫女には巫女の戦い方があるし、ナナにも意地があるのだ。


 一週間後の早朝、封鎖された太白神社に忍び込んだ二人は、おざなりに残骸が片付けられた本殿に足を踏み入れていた。
「ここ使って本当に大丈夫か……?」
 ぽっかり空いた天井の穴を見上げて、ヤクモが懐疑をこぼす。
「昨日一応確認したけど、神殿の鬼門封じは無傷だったから大丈夫。妖怪は逃がさない。正直、新太白神社の方がまだちょっと怖いかも」
 ナナは答えながら小さく肩をすくめた。
 かの地はかつて天流宗家が支配していた場所だ。その位置は御所の鬼門にも通じている。市中にある吉川家の太白神社とは、司る鬼門の規模が違う。
「まあそれなら」
 あっさり懸念を引っ込めて、ヤクモは自分の鞄から戦装束とマントを引っ張り出した。
 気休め程度に妖怪避けや気配遮断を織り込んだ物だが、意外と重宝する。見た目はすっかり襤褸になってしまっているのだが。そうなった責任の一端はナナにもあるのだが。
「そうだ。これも持っていって」
 言ってナナは、ヤクモの手に砂時計を押しつけた。
「何だこれ」
 目を眇めるヤクモの前で、ナナはもう一つ同じ物を鞄から取り出す。
「手っ取り早く言うと、こっちの私のと同期して、あの伏魔殿の中でも一定間隔で砂が落ちる砂時計。とりあえず三日間で設定してあるから。砂が落ちきったら一度帰ってきなさいよね」
「たった三日……」
「一人で闇雲に出鱈目に歩き回るのと、空間構造を解析しながら掘り進めるの、どっちが良い?」
「……お世話になります」
「わかればよろしい。ただでさえあの中は時間感覚が狂うってのに、野放しにしたらあんた帰ってこないでしょ。学校もあるのに」
 ナナがぴしゃりと言うと、ヤクモはばつが悪そうな顔でさっと目をそらした。
 伏魔殿を見つけたばかりの頃、疲労も空腹もほとんど感じないので長居したら外では一週間も経っていて、モンジュとイヅナにこっぴどく叱られたことはさすがにまだ彼の喉元を過ぎ去っていないようだった。
 普通の時計ではなく砂時計という期限を示す形にしたのも、ヤクモならば十中八九、日数感覚を落っことすと見越しての選択だ。
「飛び出したっきりはなし。中で何かあってもわからないんだから」
「ん。わかった。気をつける」
 今度は素直に頷いたヤクモはガラスの中の砂をまじまじと覗き込むと、つぶやくように言った。
「相変わらず変態的に複雑な術……」
「うっさい。私は技巧派なんですー、何でもかんでも力任せのヤクモとは違うんですー」
 古い神具に仕込まれている術式を解読するのも、複数の術式を精緻な細工物のように組み合わせてそれを闘神符に込める作業も、嫌いではない。力の総量では劣っていても、貴重な神具の機能を闘神符で部分的に再現してみせるのが今のナナの本領だ。伏魔殿探索に有用な術も、天流の宝物からいくつもコピーさせてもらっている。
 この砂時計を連動させる術は空間操作の応用なので、ヤクモが言うほど難易度が高い物ではないが。
「そんな何でもかんでもじゃないですー、単純な方が使い勝手がいいんですー。それに俺だってちゃんと出力とか持続時間とか考えた術も組める。普段は必要ないだけで」
 するとヤクモはそう言って、どうだとばかりに闘神苻の束をナナの手に押しつけるように差し出した。
「何これ。守護の苻?」
「ああ。術を起こすだけで展開する。一枚でもそれなり、陣を組めば式神の攻撃にも耐える優れ物」
「そんな変態的な密度で力を込めた苻を、どれだけ作り置きしてるのよ。よくガス欠しないわね……」
 受け取った、ゆうにトランプ一組分はありそうな束から一枚をめくって、ナナは呆れた目で見やった。シンプルかつ速効、しかもこの手の術は苻に蓄えた力の量が質に直結するので、彼が本気で作ったならこの防壁はかなりの鉄壁に違いない。
 契約式神を五体とも一斉に降神しながら平然と戦える時点で、ヤクモの容量は尋常ではないのだが。
「離れていたら何かあってもわからないから、念のためにな」
 そこでナナははたと気づく。
「これ、私に?」
「自分の分なら作り置きなんかしない」
 確かに、ヤクモが携帯している闘神符で仕込み済みなのは戦闘以外の用途ばかりである。父親と同じく、戦闘時は即興で最適な術式を構築するのが彼のスタイルだ。
「心配してくれてる?」
「最初からそう言ってる」
「ありがと」
 今さら照れくさくなったのかむすっとしたヤクモに、ナナは微笑み返す。
 彼がいない間、肌身離さず持っていよう。
 無事に帰りを迎えられるように。そしてルリの加護をこれ以上喪わないように。
「それじゃ」
「うん。いってらっしゃい」


 ナナが闘神士であることをやめたのは、闘神士であることを捨てたかったからではない。
 ただ、ネネでもルリでもない、新しい次のことを、その式神とともに闘神士として戦い続ける自分を、今すぐにはどうしても考えられなかった。
 けれど徒人に還るのではなく、闘神巫女の道を選んだのは、手放せない何かがあったからだ。
 ナナが晴れて正式に闘神巫女として認められた日。闘神士ヤクモの補佐役に命じられた日。後見人として親代わりをしてくれたモンジュと二人きりで、ささやかだがとても大切な秘密の話をしたその日、ナナはそのことに気づいた。
 それは真っ白な桜の花びらが、降るように咲く日だった。
「妖怪退治の仕事は時に、人の闇を目の当たりにすることになる。私は、人が負うべき贖いを式神に押しつけることが耐えられなかった。……師は、人は生きるに値しないと見限ってしまった。君たちはどうか、違う答えを見つけてほしい」
 モンジュの言葉は、まるで祈りのようだった。
 けれども、そうでなければ救われない予感ならナナにもあった。
「ヤクモはきっと、人も式神も救いたいと思ってます。自分の力はそのためにあるんだと。けど私は、そんなに強くなれません」
 それはとても純粋で、しかし少し怖ろしかった。
 ナナも式神の献身によって生かされた一人だ。故にその深淵に触れてしまった。生涯この命を、人の価値を、問い続けながら生きていく。
「そう気負わなくてもいい。ヤクモは目を離すと糸が切れた凧みたいに飛んでいってしまいそうなところがあるが、ナナくんが側にいてくれると地に足がつくようで、私は安心できるよ」
 困ったところがあいつに似てしまったからな。
 言葉どおり困ったように、それでいて懐かしむように、ナナの少し前を歩くモンジュが苦笑いを滲ませた。その眼鏡の奥の瞳は、境内の白い桜よりもっと遠くを見るように細められていた。
「……ヤクモはおじ様似だと思ってました」
「まあ外見は私にも似ただろうが、あの気質はあれの母親似だな。現役の頃はそこらの闘神士よりよっぽど勇ましい戦巫女だった。闘神士の責務と、力を持つ者の使命を真摯に受け止めていた。そのくせ正義感で突っ走るから追いかけるのも大変だったが、そのうち当てにしてくれるようになった。振り回されてばかりだったがね」
 その言葉の意味を、勝手に都合良く解釈してしまっても許されるだろうか。
「――私も、追いつけるように頑張ります」
「いいや、無理に追いつかなくてもいいんだよ。生き急ごうとするバカの首根っこを捕まえるくらいで、きっとちょうどいい」
 振り返ったモンジュの、噛みしめるような声がひどく優しかった。
 それはきっと、幸福な痛みだった。
 そして自分の中で芽吹いていた想いは恋なのだと、ナナはこの時ようやく気づいた。


 あの人は、つくづく一人で戦おうとしてばかりだった。あの戦いが終わった後も。
 ずっと白虎の式神とふたりきりで戦って、強くなってしまったから。
 そのくせ自分の為すべきことを定めてしまったら、当然のように全身全霊をつぎ込んでしまうのだ。
 どこかへ勝手に、飛んでいってしまうのだ。
 ――だからきっと、ほんの少し重たいくらいで、ちょうどいい。





夏の終わりに。



 そして季節は過ぎ、八月。
 縁側に脱ぎ捨てられた襤褸と、面した和室の真ん中に大の字で爆睡しているヤクモを発見して、ナナは深々とため息をついてみせた。姿は見えなくとも恐れおののく気配がしたのは、たぶん気のせいではあるまい。
 ヤクモはどうやら社務所まで辿り着いて、部屋を全開にしたあたりで力尽きたらしい。彼の腰からこぼれ落ちて畳に転がっている零神操機に軽くノックして、簡潔に問う。
「いつ帰ってきたの?」
『夜明けを少々過ぎた頃、になります』
 そろりと霊体で顔を出したブリュネが、おずおず答える。
「じゃ、そろそろ起こさないと死ぬわね」
 力づくにでも。
『どうかお手柔らかに……!』
 にっこり微笑んだナナに、ブリュネが悲鳴のような声を上げた。
 そんなたわいない騒ぎだけで当のヤクモは目を覚ましたので事なきを得たが。
「……ただいま?」
 まだ半分寝ぼけているようなぼやけた声に、ナナは思わず笑みをこぼす。
「おかえり。ここ直射日光は当たらないけど普通に暑くない?」
「朝は、涼しかったんだ……」
「はいはい」
 襖も全開なら風通しが悪いわけではない。新太白神社にも森はあるので街中よりは涼しい。それでも日が昇ってそこそこ経てば、容赦ない熱気が部屋に流れ込んでくる。
 とりあえず持ってきていたスポドリのペットボトルで額を小突くと、受け取ったヤクモがのろのろと上体を起こして封を開けた。
「さんきゅ」
「式神はそういうの鈍いんだから、もう少し自分で気をつけなさいよ」
 体力があっても伏魔殿での疲労は蓄積しがちだ。しかも最近はあの中にいる方が長くて身体があまり夏に慣れていないはずだから、京都の酷暑は堪えるだろう。ずっといてもつらいのだし。と。
「あ、しまった」
「何だよ」
「今アイスない」
「……マジか」
 それはとても絶望的な声だった。ナナも気持ちはわかるので深刻にならざるを得ない。
「大マジ。お茶しかない。買いに行く? もうすぐ十時だし外出るなら今のうち」
 灼熱の太陽が昇りきってしまったら、外を歩くのはだいぶ厳しい。
「あー。……でも行かなきゃアイスないのか……」
「ほら行くぞー冷たいアイスが待ってるぞー」
 さてどこへ行こうか。適当にコンビニで買ってもいいが、いっそ大型モールに行って日が傾くまで適当に居座るのもありだ。こんなに早くヤクモが帰ってくるとは思いもしていなかったので、昼食も考え直さないとならない。
 そこまで考えて、ナナはふと気づく。そう、早すぎる。
「留守番はいいのか」
「授与所の当番は私じゃないから」
「そうか」
 ペットボトルを飲み干したヤクモが、顔洗ってくると立ち上がる。適当に伸びをしながら廊下に出て行く背中を見送って、ナナはひっそりと首を傾げた。
 しばらく前からあの砂時計の設定は目安程度に一週間にしてあるが、七日どころかつい先日、零神操機を取りに行く前にもルート確認のため一度帰ってきているので、今回はほぼ名落宮との往復くらいしかしていないのではなかろうか。
 ――こんなに早く、何の理由もなく彼が帰ってくるだろうか?


 クーラーの効いた店内に辿り着くと、そこは天国だった。
「生き返るー」
「俺は一命を取り留めた気分だ……」
 一息つくナナの隣で、夏ってこんなに暑かったかと心底げんなりした顔でヤクモが呻く。
 やはり日中はここから動かない方が良さそうだ。苦笑いをかみ殺しながらフードコートへ向かう道すがら、モールのメインストリートに面した水着のマネキンに思わず目が行った。
「海、いいなー」
 口に出したものの、思ったより気持ちはこもらなかった。
 今年は行っていないし、おそらくどこにも行かないまま夏が終わるのだろう。去年はナズナも連れ出して遊びに行ったものだが、あいにく彼女は今は長野だ。
「あっちにも海あるんでしょ」
「ないことはないが……」
「なんで嫌そうなの」
「今はバカでかいサメに絡まれたのを思い出す」
「なるほど」
 妖怪だろうか式神だろうか。ごく最近のことのようだが、戦いのことはヤクモはあまり詳しく話さない。だからナナも聞き出さない。
 伏魔殿の調査を二人で始めたばかりの頃は、季節も地形もばらばらな各層を探検するのが結構楽しかった。そのうち明らかに人が造った四阿や小屋を見つけて、残されていた古い手稿から伏魔殿が何のために出来たのかを知って、あの中を調べる意味合いが少しずつ変わっていった。
 奥へ進むにつれて、深い狂気にあてられたような妖怪にも出くわすようになった。ナナが敵の警告に巻き込まれたのもその頃だ。
 今の伏魔殿はもはや、ナナの知らない、三つの勢力が入り交じった闘神士の戦場なのだろう。
 それはとっくに納得していたことだったけれど。
 フードコートにある目当てのアイスクリームショップで、店頭に並んだたくさんのアイスから二人で二つずつばらばらに選ぶ。ナナはストロベリー系を合わせて、ヤクモはメロンとバナナとストロベリー。コーンではなくカップなのは混ぜるから。
 座ったのは、小さな二人掛けばかりで人がまばらな、窓際の席だった。大きなガラス窓に掛けられた縦型ブラインドの隙間から外をちらりと見やったヤクモが、ぎらぎら輝く太陽の光に辟易した色を浮かべたのが少しおかしかった。
「ま、ヤクモが次に帰ってくる頃には、残暑も少しはマシになってるんじゃない?」
 それは何となくの思いつきでしかなかったが、この言葉にヤクモが一瞬凍りついた。
「――や、そんなすぐに変わらないだろ」
「一週間ならね」
 舐めた苺のアイスが甘酸っぱい。
 割と当てずっぽうで口にしたことでも、今は確信に近い。
 すると、誤魔化すようにアイスを混ぜながら何度も口を開きかけては言葉を飲み込んでいたヤクモが、ばつが悪そうに目を伏せた。
「少し、先を急ぎたい」
「月に一回くらいは無事を知らせてくれると嬉しい」
 伏魔殿の底がある方角はおおよそ見通しが立った。かなりの深度まで潜らなければならないし、一直線に進めるわけでもないし、座標を特定するにはまだしばらく掛かるだろうが、解析を理由に今までのような頻繁な出入りをねだるのは潮時だ。
 ヤクモが零神操機を必要とした時点で、覚悟していたことだ。神流との衝突が激化していなければ、そんな事態になるはずがないのだから。
「わかった。……それと、だな」
「え、まだ何かあるの?」
 さらに何か言いたそうなヤクモに、ナナはぱちぱちと目を瞬いた。
 でもこれはきっと気まずいのではなくて、とっておきのことの気がした。果たして。
「その。……コゲンタに会った」
「ホントに?」
 思わず身を乗り出す。
 ではナズナから伝え聞いていた白虎の式神とはやはり、そうなのだ。
「元気だった?」
「ああ。なんかちょっとトラブってたらしいが、仲良くやってたよ」
「ヤクモが元気にやってるとこも見せられた?」
「……たぶん」
「そっか。よかったね」
 ナナが笑うと、少しはにかんだように、子どものように、ヤクモも笑って肯いた。
 ひとまず後でイヅナにメールしなくては。そう思った。
 今日は総本社に帰ろう。二人で。










彼の理由。



 薄暗い夕暮れの中、数だけは多く厄介な中級妖怪の群れに飲み込まれ見失ってしまったナナたちを、ヤクモがようやく見つけ出したとき、彼女は既に強力な結界に護られていた。
「ナナ! ルリ!」
 印を受けたタカマルが電光石火のごとく妖怪たちを蹴散らせば、ルリの腕の中でほっとしたように笑ったナナが、ふらりと倒れた。
「ナナ!?」
 慌てるヤクモをなだめたのは、まるで日常のように平然としたルリだった。
「この子は大丈夫、少し力を使いすぎただけ。それと……きっとあなたの顔を見て安心したのね、王子様」
「茶化さないでくれ。でも間に合って良かった」
「ええ本当に。それじゃあ。ナナのことよろしくね」
 ルリは慈しむようにナナの髪を撫でてから、その身体をヤクモに託す。
「いや、俺はまだ後始末が……」
「ごめんなさい、私はここでお終いだから、あなたにお願いするしかないのよ」
「――何だって?」
「さっきの結界は私の命を代償にした、決して壊れない呪い。守護の力を使い切るまで、半永久的にこの子を護り続けるわ」
 思わず息を呑んだヤクモに、ルリは困ったように笑った。
「そんな顔しないで。私は式神、元の場所に帰るだけ。妹と同じところにね」
「でも、こんな……目が覚めたら、いなくなってるなんてっ」
「お別れは済ませてるから、ナナもわかってる。不本意な終わりではあるけど、ナナが無事でいてくれたら、私はもうそれでいいの」
 言って、ルリは傷だらけの手でヤクモの頭をやわらかに撫でた。母親のように。
「元気でね。あなたたちの幸せを祈っているわ」
 そうして彼女は、日没とともに消えていった。
 契約満了ではないのに、最期の瞬間まで満足そうに微笑みながら。





Reach for Tomorrow/over





うちのヤクナナはつきあってないよ両片想いだよとは放送中連載中からうわごとのように言い続けてたけど、まあ捏造カプなので断片的にしか書いてなかったのですが、今回お題箱で話を振ってもらったら、突然ぶわっと爆発しました。
そんなわけで、ありったけの妄想ヤクナナ観を詰め込んでみた集大成的な根源的な話です。友情以上で仲間意識と同胞意識と守りたさと痛ましさと、あと負い目がかすかに入り混じった両片想い。繰り返します両片想いです。恋人的な意味でおつきあいはしておりません。

ただし漫画版はすぐに出てきたけどアニメ版DVD行方不明で諸々の設定とか細部うろ覚えのまま強行してます、いろいろ間違えてたらごめんなさい。あと書き進めながらその場の思いつきで即興の捏造設定を突っ込んでますごめんなさい雰囲気です。
でも吉川母は昔からいろいろ妄想してましたね特に印20〜21で。この話と直接は関係ないけど全く無関係でもなさそうな捏造裏設定、ヤクモの母方の曾祖父がマホロバ。

ナナについて。このナナは闘神士引退後イヅナさんに師事して闘神巫女に転身。戦闘支援や戦況観測を担うサポーターとして戦場にも出張れる系巫女。最初にソロ戦闘の経験積みすぎたせいで戦い方がめっちゃ前のめり気味なヤクモの、程々の重石またはお目付役ともいう。ついチート技能を盛ってしまったけど。神具のリバースエンジニアリングからのロステク再発見。
いつかナズナのように巫女と両刀で闘神士にも復帰するかもしれませんが、もし復帰ルートなら朱雀がいいって当時もこぼしてたので今回ちょっとその路線も考えたけど、私ライザさんは基本設定とアニメでちらっと映った分しか知らないので手が出ません。
とりあえず「俺の巫女」「あなたの巫女」を書いて私は満足しました。

私は普通にアニメ版見てたら次回予告に出たヤクモに一目惚れして漫画版に飛びついた陰陽歴なわけですが、豊穣篇が始まったばかりという11歳ヤクモが日常と戦場で完全にスイッチするようになってるのを見せつけられる時期だったので、バトルヒロインになれそうだったナナに理解と共闘からのヤクナナを期待した気がします。
リクは普通/日常に帰る物語だけど、ヤクモはどんどん後戻りできない感が強くなってたし。しかも17歳ヤクモが後戻りどころかばっさり振り切って天流最強闘神士様やってるアニメと同時進行だったので、よけいに救いを求める気持ちがヤクナナこじらせた気がします。
リクモモのように幼馴染みヒロインのヒトハにいかなかったのもたぶんこれだろうな、リクとヤクモじゃ向きが正反対。



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