電車が到着することを知らせる、アナウンスが流れる。
 その時ホームに入ろうとしている電車へと目を向けたことに特に意味はなかったし、だから特に見ようと思ってみたわけでもなかった。本当にたまたま、ただ目を向けただけだった。
 だが。
「何、あれ」
 それを見た瞬間。
 ナナは思わず、手にしていた携帯のカメラを向けてシャッターを切っていた。






SUPER!で行こう









「何でそれが、人の顔を見るなり笑い死にしかける理由になるんだ」
 自分の膝の上で頬杖をついて、ヤクモは半眼で呻く。
 しかし睨まれた方はまるで意に介さず、目尻に浮かんだ涙を拭うのに必死だ。
「だ、だって」
 何度か深呼吸を繰り返して必死に息を整えて、なのにヤクモの方を振り向いた途端、また吹き出してしまう。
「ごめ、ちょっと、また」
「もうおまえ帰れ」
 数日ぶりの帰還で泥のように安眠を貪っていたところを叩き起こされた上に、この仕打ち。さすがにうんざりとした面持ちで明後日の方向に顔を背け、ぼやくが。
「だからゴメンって。いいから見てよこれ」
 ようやく笑いの発作が静まった隙に素早く操作して、ナナは写真を呼び出すと携帯の画面をヤクモに突きつける。
「絶対、凄いから」
 その妙に力のこもった断言に引きずられ、ちらりと目線を戻した。
 どちらにしろ何にしろ、結局は見なければ引き下がってくれないということもある。
「何なんだよ――」
 映っていたのは、薄紫の電車だった。
 特急だから、車両の先頭には名前が入っている。
 名前。
 スーパーやくも。
「…………」
 うっかりぐったり縁側に突っ伏した。
「だってスーパーよ、スーパー!」
 そのヤクモの反応にナナは気をよくしたらしく、勢い込んで身を乗り出してきた。
「連呼するな!」
 がばりと起き上がったヤクモも負けじと怒鳴り返す。曲がりなりにも神社なので神苑も含めれば敷地は広い。大声を出すことに気兼ねする理由なんて何処にもない。
「おかしな戦隊引き連れてるヤクモには、なんだかぴったりって感じがするじゃない!」
「どういう感じだ!?」
 というか、おかしなって。
 そこをさらっと言った少女と、そこはさらっと流した主に、五体の式神が零神操機の中でひっそりとさめざめと涙したかどうかは、定かではない。






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5月11日19時、えらい電波をキャッチしてしまいました。
ス ー パ ー や く も

吉川ネタ ふぉーゆー。
そういえばそんな特急電車があったなぁと思っただけ。
島根に行く際はゼヒご利用くださいw
ふろむweb拍手。転載許可もらった原文まま。
で、これが出来ました。ナナは思いっきり私の趣味です。むしろ願望です。
今の豊穣姉妹編が終わっても、最後までレギュ入りしていてほしいのですが。

何となく15〜16歳くらいを想定気味。あと、お兄ちゃんぶってない素のヤクモさんっぽく。
二人の関係は、別に恋愛じゃないけど、いろいろ特別な記憶を共有する特別な相手という感じで。
何故ナナが岡山駅にいたのかとかはツッコミ不可。

ちなみにこれが、381系特急電車「スーパーやくも」です。
SUPER YAKUMO
上の写真は日本の旅・鉄道見聞録様からお借りしました。
あえてパノラマグリーン車じゃない方の写真を載せちゃいます。
古くささが漂っている方が陰陽って感じよね(謎)