0. I n t r o d u c t i o n










 小綺麗に飾られた部屋をただよう紫煙は、重苦しく渦を描きながら虚空へ溶けていく。
「ヤツは、ペガサスは敗北した……」
「すべては終わりだ」
「ヤツが我々を見逃すはずがない」
「しかしそれを座して待つわけにはいかない」
「急がねば」
「海馬瀬人が戻るのは?」
「おそらくは今夜のうちに……明日の朝には確実だ」
「それまでに、すべて揃えられるのか」
「ヘリに同乗しているらしい。うまくいけば一度に」
「いや、一度で揃えられなければ失敗に終わる」
「我々にはもう、後がない」
 厚いガラス製の灰皿に、未だくゆる煙草が苛立たしげに押しつけられた。
「これは、最後の賭けだ」









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