生誕
こぼれたのは言葉でなく、涙だった。
その手のあまりの小ささに、何も言うことが出来なかった。
ゆるやかに丸まっている指は爪先ほどしなかくて、生まれ立ての木の葉よりもやわらかで、何を手にすることも出来ないように見えた。
なんと、か弱き命か。
それでも、そっと抱き上げた腕に掛かる確かな重みに、布越しに触れる熱にわきおこる、これは後悔ではない。
この涙は決して、後悔ではない。
これは畏れだ。
この重みは命の重み。
この熱は命の熱。
これは畏れだ。
なんと小さな、命か。
なんと輝かしい、命か。
これは世界の命のひとつ。
この命は、けれど、世界の運命そのもの。
この赤ん坊が、この手が、運命の鍵を握る。
もみじかえで
ヨシュア。アークが生まれるずっと前に精霊と約束を交わした、父親。