第1章　逝き道に花は埋もれた

死にたくなかったら戦いなよ
でなければ、尻尾を巻いて必死に逃げる姿を見せてくれ

敵だっていうなら戦わせてもらうよ

カオスの手先らしいやり方だな

クジャ！　ほんとに信じちゃダメなのか！？


歩けるうちに……逃げた方がいいよ



……


今のうちに退くぞ

ジタン、今は逃げることだけ考えよう
後ろのやつらまで出てきたら、面倒になる

……ああ、そうだな


……逃げた、か


クジャ……


奴ら、追ってこないようだな
俺たちが目当てじゃなかったのか……？

ごめん、ふたりとも
オレが騙されてたせいで、危ない目にあわせちまった

ジタンのせいじゃないさ
元の世界でもよく知ってるやつだったんだろ

だからこそオレは、もっとちゃんと
クジャの考えてることを確かめなきゃいけなかったんだ

ジタン……

あまり思い詰めるなよ

……わりぃ　しばらく、ひとりにさせてくれないか
ちょっと頭冷やしてくる

じゃあ、おれたちも下で適当に休んでるからさ
気がすんだら降りてこいよな

先に行っててくれていいんだぜ？

待ちくたびれたらそうするよ


……重症だな、ジタンの奴

すっかりヘコんじまってるよなあ
……むりもないか

何も思い出していなければ
奴のことも、ただの敵というだけだったんだろうが

それはラクかもしれないけど、かなしいな
ジタンの記憶には、あいつを信じる理由があるんだ

……そういや、前にティファも言ってたっけ
初めて会った気がしないカオスの剣士に助けられたって

カオスのやつらって、なんで「敵」なんだろうな

……その辺にしておけ
いちいち考えていたら、戦えなくなる

そうなんだけどさ　あのクジャってやつが
最初から騙してたのかは、まだわからないんだぜ

奴はカオスの戦士だったんだぞ？

でも、さっきだって結局
あいつのおかげで無事に逃げれたようなものだろ？


クジャ……ぜんぶ思い出してないだけなのか？
それとも ほんとは……？

いや そんなことないよな……
きっと……


こんな高さにいたのか
どうりでバッツがついてこないわけだ

スコール？
下で何かあったのか？

いや、待つのも飽きたから先に行く
おまえも降りてこい　考えるだけじゃ答えは出ない

え？

ひとつ賭けをしよう　今から俺と勝負して
ジタンが勝ったら、あの男をもう一度信じる

！？　んなのムチャクチャだろ
だいたい、そんな賭けに何の意味があるんだよ

さあな　考えすぎて動けなくなるくらいなら
走り回って答えをさがしてみろ、だそうだ

言い出しっぺはバッツのヤツかよ……
なんだかわかんねえけど、やるからには勝ちにいくぜ！



ほら、賭けはジタンの勝ち
スコールも吹っ切れたか？

ああ　俺はこれでいい
ジタンはどうだ

オレだってクジャのことは信じたいよ
けど……オレにはもう、今のあいつがわからないんだ

わからないなら、会って確かめればいい
今度は、よけいな邪魔の入らないところでな

そっか……そうだよな　そうすりゃいいんだ
オレ、もう一度クジャと話してみるよ

決まりだな　よし　行こう！

行こうって……これはオレとクジャの問題なんだ
これ以上、ふたりを巻き込めない

なに言ってんだ
ひとりでさがすのは大変だろ　手伝わせろって

乗りかかった船だ、最後までつきあうさ

バッツ……　スコール……
ありがとな！


クッ……

あらら、負けちゃったみたいね
やっぱり、やる気がない子は勝てないわねぇ、もう

まあ、そのくらいじゃ消えないよ　安心しなさい
ちょっと遅い反抗期は、これでオシマーイ！


今度の復活祭には
ど〜んな記憶を刷り込んじゃおうかな〜？

ニヒヒヒヒ……♪


クジャをさがして、ジタンたちは世界を駆ける
しかし、敗北の物語はすでに始まっていた

逝き道に眠る花　後編に続く