第2章　逝き道にいつか花は咲く

よっし、そろそろ雪山が見えてきたな
雪原を越えれば、前にクジャが言ってた島まですぐだ

その話が本当なら混沌の大陸と繋がる場所なんだ
これから先、気を抜くなよ

だけど全然見つからないし
いっそカオスの連中に聞いた方が早いかもな

……言葉の通じる相手だったらな

お！　ウワサをすれば言葉の通じない影がたくさん！
うん？　あそこで戦ってるのカインじゃないか？

んじゃいっちょ加勢してやりますか！
イミテーションの十や二十、４人でなら楽勝だぜ！


助けられたな　礼を言う

困ったときはお互い様ってね
さすがにあの数で来られちゃ面倒だよなあ

……カインひとりなのか？
前に会ったときは、セシルもいただろう

ああ……どうやら　ひずみを出るときにはぐれたらしい
奴らにもその隙をつかれてしまってな

まずいな　この辺はさっきみたいな群れが多いんだ
近くにいないか　さがした方がよさそうだ

助けられたな　礼を言う

困ったときはお互い様ってね
ところでさ　最近あれの本物を見かけてないか？

スコールが踏みつけているイミテーションの本物をか？
いいや　知らんな

そうか　だったらもうこれに用はないな


見覚えのない顔だったが、カオスの戦士か？

まあ、そうなんだけど…… ちょっとワケありでさ、さがしてるんだ

うーん、これだけ誰も見ていないんじゃ
やっぱり向こうに乗り込んでみるしかないか

あれ　そういえばカインひとりなのか？
こないだはセシルと一緒じゃなかったっけ

ああ……どうやら　ひずみを出るときにはぐれたらしい
奴らにもその隙をつかれてしまってな

まずいな　この辺はさっきみたいな群れが多いんだ
近くにいないか　さがした方がよさそうだ


なるほどな　それでそのカオスの男をさがしているのか
……これだけ踏み荒らされて、まだ咲くのか？

ちぎれたのはムリだけど、根っこがあれば大丈夫さ
こんなところでも春を信じて待ってる　強い花なんだぜ

ほら、まだきれいなやつ
せっかくだから、おまもり代わりにもらっちゃえよ

いや、その花はおまえが持っていろ
俺はフリオニールのように大事にしてやれそうにない

……なあ、カインも軍人だからいろいろあるだろうけど
ひとりであんまり考えすぎるなよ？

……セシルが何か言ったのか
この前、おまえとスコールと三人で何か話していたな

終わらない冬はないし、夜もいつか明ける　それだけさ
行こうぜ　セシルもどっかで心配してる


……いいや、バッツ
この世界に夜明けは来ない


だが……そうだな、俺も信じているから選んだんだ
次に目を覚ましたときには、皆を頼む


カイン、無事だったのか！
……バッツはやられたのか！？


バッツもカインも、どこまで行ったんだ……？
もう二日だぞ　寄り道のしすぎだっつの

二人が集合場所に一度来た様子もなかった
さがしに出た俺たちと、行き違ったわけでもない……

セシルも見つからないし、カインにバッツまでが消えた
何かあったと考えるしか……　ジタン、上だ！

おやぁ？　これはこれはバカなおサルさんご一行！
こんなところで何やってんの？

あのときの！　それはこっちのセリフだっつの！
ちょーっと聞きたいことがあるんだけどな！

えー？　ぼくちん今パーティの準備で忙しいのでー
イミテーションどもよ　代わりに遊んであげなさーい！


ジタン、先に行け！

でも！


何のためにここまで来たんだ　早く行け　見失うぞ
ついでにいろいろ聞き出してこい

……わかった
スコール、また後でな、絶対だからな！



（よし、これで残り２体　一気に決めてやる
　……いや、まだ何か来る！？）


くっ……

急所はかわしたか　しかしその足ではろくに動けまい
……大人しく剣を引け　すぐに眠らせてやろう

それがあんたの出した結論か、カイン……

そうだ　この戦い、俺たちは負ける
圧倒的に数で勝る相手に戦い続けても、全滅するだけだ

少数でこの戦況をくつがえすには
もはやクリスタルの結実に賭けるより他ない

だからバッツも、それにセシルも、
力ずくでこの戦場から引きずり下ろしたというのか？

そうやって勝手に決めて、全部押しつけて……
残ったあんたは、時間稼ぎのために命を投げ出すのか

フッ　だから許せ、とは言わんさ
だが……おまえたちを死なせるわけにはいかない


このピエロ野郎……逃がすかよ！


いったあーい！！
カーッ！　足の速いサルですねえ！

さあ、追いついたぜ　答えてもらおうか
ここで何してた？　それにクジャは今どこにいる？

へ？　まさかまさか、裏切り者なんかさがしてたの？
バカだねえ！　とっくにおまえのお仲間に倒されたよ？

なっ！？
クジャが……死んだ……？

だからさぁ　おまえも、さっさと死んじゃえば？
そしたら、すぐにまた会えるかもしれませんよぉ？


無事か、ジタン！

カイン！？　今までどこ行ってたんだよ、さがしたぞ！
っとと、何だこれ？　青い……花……？

おまもり代わりに持っていろ　やはり俺の性には合わん
あとの話は、この敵を倒してからだ


ほー……こいつは確か？
これは、お声をかけておくべきかもしれませんね？




砕けた！？　……くそっ！
イミテーションに入れ替わってたのかよ！


ははっ、ひっでぇ結末……
クジャはもう死んでて、ヤツにも逃げられて

みんなをさんざんオレのワガママにつきあわせといて
結局、何にもできなかった

……そうか、間に合わなかったのか

ああ、そうだ、早くスコールのところに戻らないと
バッツはそっちに行ってるんだろ？

いや　戻ってももう、誰もいない
スコールも、バッツもな


カ、カイン……？

これはすべて悪い夢だ
だからジタン、おまえももう眠れ


次に目が覚めたときには
その手を差し伸べてやれるといいな


そして終わりなき冬の終わりに、命の花は咲き誇る
降り積もった想いと願いと祈りを、清らかな水に変えて



お、雪だ！


ほんとだ、降ってきたなあ！
って、そんなつまんなそうな顔するなよ


まったくだ
あ、まさか冬は暖炉の前で丸くなるクチか？


……別に
だが、こんな見せかけだけの雪の、何が楽しいんだ


そりゃこの世界の雪は、ちっとも溶けないくせに
降ってくるのは積もらないで消えちまうけどさ

雪が降ったときの音　おれは好きだぜ？
それに、いつかこの雪もとけて花を咲かすさ　……ほら


すっげえ！　まだつぼみだけど、ほころび始めてる
こんな雪原にも花は生きてるんだな


何という花なんだ？


雪割草っていって、こいつが咲くと春が来るんだ
おれが最初に見つけたときはもっと小さかったんだぞ


冬来たりなばら春遠からじ、か
この世界にだって、いつか春は来るんだ

▼前編：スコールの賭け
この賭けで答えを探していたのは、実はスコールの側。ジタンの中にある「クジャを信じる理由」の確かさを試す意味で、勝負を吹っかけた。決着がついて（あるいは身体動かして気が済んで）クジャを信じるジタンを信じようと決めたスコールは、自分がジタンから答えを得たように、ジタンもクジャと向き合ってくればいいという意味で「直接会って確かめろ」と迷っていたジタンの背を押す。
ジタンのアシストに入ってるけどバトルを手伝わないバッツは、最初から答えは決まっていたのでジタンをのんびり応援。

▼後編：移動ルート
589は当初、海沿いではなく湖の西側からグルグ山を通って雪原に南下、そこから東に神竜の島へ向かうつもりだった。
湖の北でカインと合流後、セシルを捜すために二手に分かれ、カインとバッツが湖の東側へ、ジタンとスコールが西側へ向かう。
不条理と奇跡のひずみ（012一章のライトニング篇）でバッツを倒した後、カインはいったんバッツを隠してから再びジタンとスコールに合流しようと湖に向かうが、その途中（012六章カイン篇）でフリオと出会って再び南下。
ジタンとスコールは南端の集合場所に現れない二人を捜して、東ルートをクレセントレイク周辺まで北上した後また集合場所に戻り、今度は西ルートのエルフ雪原側へ向かっていたさなか、聖域をイミテーションの大軍で包囲する準備を始めたケフカと遭遇。
最終的にジタンは雪原にある凍れる大地のひずみ（012七章ティファ篇）で、スコールはその手前で、カインに倒される。

▼後編：セシルとカイン
589三人でクジャと会う少し前のこと。実はオニオンナイトも一緒で三人と三人だったけど、セリフでは割愛。多人数で目立つことを避けるため、三人だけでクジャに会いに行った。
カインはゴルベーザから真実を知らされて間もない頃で、一人で考え込むことが増えていた。その思い詰めた様子を心配したセシルがこのとき、バッツとスコールに秘かに相談を持ちかけている。さらに、増え続けるイミテーションとの消耗戦になだれ込む絶望的状況と天秤に掛けて、もし少数を犠牲にして多数を生き延びさせる作戦を決断するなら、それは元の世界で上級軍人だった自分たちしかないともセシルは考えていた。バッツとスコールはセシルこそ思い詰めすぎだと慰めるが、結局はセシルの言ったとおりの結末に。
＃ちなみにカインはこのときジタンとオニオンナイトに捕まって、地図を手にルートについて話し合っていたり。ぶっちゃけジタンたちと分かれた後、カインがセシルに計画を打ち明けて、二人で気づかれないようにオニオンナイトを眠らせた後、隠し場所に匿うときになってカインがセシルを裏切って不意打ちした……なんていう展開があっても面白いかなあと思った裏設定の名残。『雪道』セシル篇？（笑）

▼後編：「お声をかけておくべき」
このとき既に身代わりを置いて隠れていたケフカがアルティミシアにカイン発見を報告、彼女が様子を見に来たところでティファと遭遇する。

▼後編：エピローグ？
12回目のジタンは、カインの寄越した青い花＝雪割草を知らない。バッツが二人に花の名前を教えたのは12回目ではなく、忘れられた過去の輪廻。その頃はまだつぼみだった花が、12回目では咲き始めている。

▼後編：雪割草
ミスミソウの別名。hepatica。花言葉は信頼、忍耐、自信、などなど。色も青だけでなくいろいろ。