その日、蒼穹を翔る眩い光を多くの人が目にした。
しかし、その真実を知る者は、ごくわずかしかいない。
「レム。お願いがあります」
"橋"を駆け登る光を見上げながら、ビッツが呼びかける。
『申してみよ』
昼の光よりも強いレムの輝きが、再び現れた。
「"光の橋"をもう一度、閉ざしてやってください」
空に架かる光は次第に空へかき消えてゆくが、息を吹き返した石室の光の方はどうやら消える気配がなかった。
『……よかろう』
レムの答えに、光は弾けて霧散し、石室の扉は再び閉ざされる。
「ありがとうごさいます」
それを見て深く頭を下げて礼を述べるビッツを、光がかすめた。
『再び、おまえたちのような人間が現れるまで』
光の欠片が散るファロースの山を、風が西へと駆け抜けた。
帰る場所が、在った。
帰りを待つ人がいた。
「おかえりなさい」
その扉の、向こうには。